クッキング ザ ブレイン(脳を煮る)


 携帯電話が出始めた頃は大きくて重かった。自動車内に設置した本体から分離してとりだし肩から提げて粋がってわざわざ歩いたものだった。大した急用もない身なのに、若気の至り、今にして思えば汗顔の極みであった。

間もなく、小さなハンディーなサイズに進化し、持ち運びが便利になった。とはいえ、バッグを持つことが習性ではない男たちには収めどころがなく、便利ではあるが持ち重りのする厄介な代物ではあった。

そのうち、名刺大のサイズになり、厚さも2ミリ位の収まりのよい手ごろな者になると期待した。ところが、案に相違してますます重く分厚い代物になってしまった。現在の携帯電話の重さではスーツのポケットに入れるには少々つらいモノになった。

何キロもの重量だった無線通信機能(第二次大戦中の通信兵が背中に背負ったモノ)、メールと称する郵便機能、1000万画素内外のデジタルカメラ、インターネット機能、時計、歩数計、ストップウオッチ、メモ用紙に筆記機能、テレヴィ視聴、音楽鑑賞、井戸端会議のような無駄なお喋り機能、財布機能、辞書機能など普段割合使うモノ以外にもたくさんの機能が搭載されるようになった。

これさえ持てば、他に何も無くても大体のことは出来る。一つひとつの機器に分割して身につければ何十キロもの機器・道具を背負い、ぶら下げ、巻きつけて歩いている事になる。このことだけを考えれば、化粧品などを持つ必要のない男性(最近は例外の数も半端ではなさそうだ)にとってカバンが不要になり、外出が実に身軽になった。

好事魔多し。
「携帯電話は安全だ」という「安全神話」はここにも存在している。

欧米では、携帯電磁波の「健康への影響」は早くから指摘されていた。
電子レンジで応用されているように、マイクロ波にはモノを加熱する作用があり、人体が一定の強さ以上の電磁波に触れないように国際基準が設けられている。普通の主婦でも、キッチンに設備した電子レンジには接近しないし、子供が近づかないように注意して使用している。

しかし、加熱作用ではなく、「マイクロ波の非熱作用」がもたらす健康への影響が多くの研究者に懸念されている。脳腫瘍との関係においてである。毎日数時間も携帯電話で話すヘビーユーザーと脳腫瘍との関係が注目されている。

「電子レンジと同じマイクロ波を発する携帯電話を頭に押し当てるのは、基本的に“脳を料理する(クッキング ザ ブレイン)”のと同じこと。だから、通話する時はイヤホンマイクやスピーカーフォン等を使用して、電磁波から脳を防護すべきです」と、ブラック医師(ロサンゼルスのシダース・サイナイ病院脳外科部長)は言っている。

唾液の分泌をつかさどる耳下腺はまさに携帯電話を押し当てる部位にあり電磁波を多く浴びる。ヘビーユーザーの耳下腺腫瘍の発症リスクが約1.5倍になったとの報告がイスラエルのテルアビブ大学公衆衛生学の研究チームから出された。この調査を率いたシーガル・サデッキー博士は、
「携帯電話が人体に無害だといいきれる時期は過ぎた」と、07年の取材時に答えている。

マイクロ波は軍事用にも多用されている。レーダーである。米軍爆撃機に搭載された高感度レーダーは第二次大戦で大活躍した。しかし、その後、米軍のレーダー操作員の間で、白内障・白血病・脳腫瘍などの障害が多発した。

旧ソ連によるアメリカへの秘密攻撃にマイクロ波が使われたという説がある。世界的謀略説では良く取り上げられた説である。70年代の在モスクワ米国大使館の職員の多くに目の障害や脳腫瘍等の健康被害が多発した。旧ソ連は、10年以上にわたって、米国大使館近くに3本のアンテナをたて、微弱マイクロ波を照射し続けたという。この電磁波の強さがアメリカの国内基準以下だったためアメリカ政府はソ連に抗議しなかった。しかし、微弱マイクロ波でも長期間にわたって曝露すると健康被害を受ける可能性は否定できない。

携帯電話の発するマイクロ波の影響については、研究者の見解が分かれている。研究費の出所によっても違いがあることは明らかであり、「原発」と同じ原理が働いている。「携帯安全村」という村落が存在しているのであろう。

今年の65月31日に、WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)が、「携帯電話の電磁波が(コーヒーやクロロホルムと同程度に)がん発症の原因となる可能性がある」と発表した。

携帯電話は安全とする研究グループと「懸念すべき」とする研究グループの力関係に変化があったのかもしれない。原発の安全神話の話と妙に平仄が合っている事が興味深い。

携帯電話は、常に電磁波を直接人体に浴びせながら使う家電製品であり、電磁波の防護がなされていない特殊なモノである。剥き出しのマイクロ波照射器である。

「ただちに人体に障害をもたらすものではない」という言説が官房長官や不安院ならず保安院の何にも知らない素人から発せられたのはつい最近のことである。

ただちに障害が発生するのは大量に被曝(広島長崎の被爆の如く)した場合のことであり、放射能被害やマイクロ波の被害は長年の積分の結果出てくる晩発障害が問題になるのである。これが、大問題なのである。

ごく少量のモノはどれも「ただちに障害をもたらすモノ」ではない。

日本においても、「携帯安全村」の研究者たちから疎外され、村八分にされている研究者も多かろうと推測される。そのような研究者の知見をマスコミはとりあげるべきである。そして、若者や子供たちへの適切な指導が急務である。

「健康」という大義の下、「禁煙」を強制して「麻薬ビジネス」を伸張させようとする勢力、便利便利の大合唱で人間の脳をマイクロ波で煮るビジネス、エコエコと経済的合理性の大合唱で原子力発電を推進する勢力、それらの裏に深く潜行する恐ろしい事実に注目しなければならない。

「携帯電話はあなたの脳を煮て、脳腫瘍などの障害もたらします」、「携帯電話機が発するマイクロ波はあなたとあなたの隣人にも健康障害をもたらします」、「胸ポケットにしまっていると心臓に障害が生じます」などの表示をタバコと同じように明記すべきでる。その安全が保障されるのなら、携帯電話が更に大きく重くなり、肩や腕や手の関節や筋肉に障害をもたらすものであっても・・仕方あるまい。
(注 週刊新潮 ‘11.6.16 P44-P47 「特別読物」WHO警告の「携帯電波」で発がんは本当か ジャーナリスト矢部 武氏の記事を参考にしました。一部文章の転載も致しました。矢部氏は『携帯電磁波の人体影響』(集英社)の著者です。)
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.11 2011 未分類 comment0 trackback0

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Author:須藤文弘




歯科医師(1942年2月生まれ)
医事評論家
歯科医療コンサルタント
NPO法人日本歯科保健機構 理事長
東京医科歯科大学 昭和43年卒

 

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